カイコさんは知っている!絹の取り方から絹織物ができるまで

こんにちは、菜々小町です。

着物をはじめ、ブラウスやスカーフ、ネクタイなどの衣類やランジェリーに絹(シルク)素材が使われているものも多いかと思いますが、滑らかで美しい光沢は天然の絹織物ならではのものですね。

近年、自然や天然志向への関心が高まっていることから絹製品にも注目が集まっているようですが、そもそも天然素材といっても絹は一体何から作られているのでしょうか?

絹という繊維の取り方と衣料品として使われる絹織物ができるまでには、どんな工程があるのでしょう?

絹って何からできてるの?

シルクのブラウスやランジェリーって、身に着けると肌触りが滑らかで見た目も光沢があるし、ちょっと高級感がありますよね!?

そんな化学繊維にはない風合いを持つ絹織物ですが、絹の元は蛾(ガ)の幼虫が吐き出す糸からできているんです。

「蛾(ガ)~!?」って思うかもしれませんが、蛾の幼虫である蚕(カイコ)が糸を吐き出して作った繭(まゆ)が生糸(きいと)に加工され、その生糸を使って絹織物ができるのです。

小町は小学生の頃、学校の授業の一環としてクラスのみんなで蚕を育てた記憶があります。

はじめは、蛾の幼虫という抵抗感があったものの、子供というのは慣れるのも早いのか、気づけば休み時間になると蚕が桑の葉をちゃんと食べているか心配になって、ちょくちょく蚕の巣箱を覗きに行ったりしてました。

通常、蚕は桑の葉を食べて成長していきます。

生まれたばかりの蚕は、体長がわずか2~3ミリほどしかありませんが、たったひと月足らずで体重が1万倍にもなるといわれています。

桑の葉を食べて育った蚕は、脱皮しながら大きくなり、やがて自分の体を口から吐いた糸ですっぽりと包みます。

真っ白な繭玉になった蚕の姿を見た時、「この白い繭の中で、あの蚕がサナギになってるの?」と不思議な気持ちでした。

繭になった蚕たちは、養蚕(ようさん)農家に引き取られて行きましたが、絹糸が蚕という蛾の幼虫が吐き出す糸から作られていることを知る経験となりました。

養蚕場では、衛生面や温度・湿度に注意しながら大切に蚕が育てられています。

では、蚕が作った繭から絹糸を作るための糸の取り方や絹織物ができるまでには、一体、どんな工程を経ていくのでしょうか?

繭から絹糸を作るための糸の取り方と絹織物ができるまで

蚕が吐き出した糸でできた繭から絹織物ができるまでには、専門的な技術を持った人達の手が必要になります。

絹織物を織るには、はじめに繭から細い糸を引き出して、絹糸を作らなくてはなりません。

では、繭から絹糸を作るための糸の取り方とは、どのような方法で行われていくのでしょうか?

養蚕農家で大切に育てられ、自らの体を繭で包んだ蚕は、製糸工場へと運び込まれます。

製糸工場では、熱湯か弱アルカリ液で繭を処理して糸をほぐしやすくした後、何本か糸を束ねながら繰っていきます。

蚕(カイコ)が吐き出す糸は、直径が約0.01~0.02ミリと非常に細いものですが、繰糸工(そうしこう)と呼ばれる専門の人が、繭から糸の端を探し、その細い糸を一定の太さの生糸(きいと)になるように機械で何本か合わせながら繰っていくのです。

細い糸を何本かに束ねて一本にすることで、強くて丈夫な生糸になるんですね。

繭から絹糸を作るには、製糸工場でこのような糸の取り方がされています。

出来上がった生糸は、染色が施されるか、もしくは、そのまま織機によって絹織物に織り上げられます。

染色方法には、生糸を染めてから織る「先染め」と織り上げられた織物を染める「後染め」のふたつがあるんです。

織機は機械動力の力織機と人の手による手織機がありますが、伝統的な織物は今でも手織機が使われていて、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の組み合わせによって、縮緬(ちりめん)や綸子(りんず)、綾羽二重(あやはぶたえ)、綴織(つづれおり)、絽(ろ)等の種類の違う織物が完成します。

その他に繭をお湯の中で薄く広げて綿状にした「真綿」を乾燥させた後、「つくし」という道具を使って糸をよっていくような、人の手によって糸を紡ぐ方法もあります。

手作業によって糸を紡いでいくので、とても根気のいる仕事ですね。

その糸を織り上げたものが、「紬(つむぎ)」という織物です。

ひとつの繭から得られる糸の長さは、なんと1000メートル以上といわれています。

あの小さな繭玉が、そんなに長い糸でできているなんて!!

そして、絹織物一反を仕上げるには、約2600個、重さにして約5キログラムの繭が必要になりますが、そこから約900グラムの生糸がとれ、更に処理されて680グラムに絹織物が出来上がるそうです。

繭から絹織物ができるまでには、専門家の糸の取り方による方法で、細い糸を何本かに束ね、一定の太さや強度に仕上げた生糸を織機で織り上げていくという工程を経ていくのです。

かつては、日本各地に蚕を育てる養蚕農家や繭から生糸を作る製糸工場があり、明治時代には生糸は日本最大の輸出品だったそうです。

(その当時の製糸工場の様子は、『あゝ野麦峠』というかなり昔に公開された映画の中で見ることができます。)

若い頃の大竹しのぶさんが主演されています。ご興味のある方はこちらへ ↓

 

ところが、現在の日本では養蚕農家も製糸工場もごくわずかな数で、国産の生糸を入手するのは困難なほど日本での生糸の生産量が減少しています。

平成26年に世界遺産に登録された「富岡製糸場」は昭和62年に操業を終えました ↓

現在、日本における国産の生糸の占める割合は、なんと1%以下!?

一反の絹織物ができるまでに必要な生糸を生産するには、まずは蚕が作る繭が必要です。

ですが、蚕を育てる養蚕農家の数が激減している現在、国産の生糸で織り上げられた絹織物を手にすることは難しいということが言えますね。

そんな危機に瀕している日本の養蚕ですが、受け継がれてきた伝統を守り、復活させようという取り組みが全国各地ではじまっているようです。

養蚕農家の従事者の高齢化が深刻なため、新たな生産者を増やし、養蚕技術の伝統をしっかりと受け継いでいくために新規参入者に対するバックアップを積極的に行っている地域もあり、今後の国産の生糸の生産と発展に期待が高まっています。

絹は衣料品だけでなく、絹の持つ優れた性質を活かして化粧品や美術品、工業用品、インテリア、食品など幅広く利用されていますが、更に近年では最先端の遺伝子工学を用いることによって医薬品として活用されたり、繊維としても新しい機能を持つ生糸が生まれたりなど用途の幅が広がっています。

日本で受け継がれてきた養蚕業が今、新しい時代を迎えているようですね。

まとめ

絹の原料である繭(まゆ)とは、蛾の幼虫である蚕(かいこ)が吐き出す糸からできています。

そして、絹織物ができるまでには、養蚕(ようさん)農家で大切に育てられた蚕の繭が製糸工場へ出荷され、繰糸工(そうしこう)という専門技術を持った人の手による絹糸の取り方で一定の太さの生糸になった後、織機を使って織り上げられるという工程があります。

現在、日本の養蚕農家や製糸工場の数は少なく、国産生糸の生産量はごくわずかですが、養蚕技術を継承していくための取り組みが全国各地で行われているので、今後の日本の養蚕業の発展に期待したいですね。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

菜々小町

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